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タイニーでいいじゃないか~阿部将顕さんによるHIROSAKI DESIGN WEEK体験レポート~

2月13日に開催された「セルフプロモーションワークショップ」で講師を務められた阿部将顕さんに、HIEOSAKI DESIGN WEEKに参加してみた感想をレポートしていただきました。
ワークショップに参加された方はもちろん、未参加の方にもお楽しみいただける内容となっておりますので、ぜひご覧ください。
























タイニーでいいじゃないか
~HIROSAKI DESIGN WEEK~

フリーランスマーケッター 阿部将顕



 毎年暇をきわめるバレンタインデーですが、2016年は僕にとって、少し特別な経験になりました。

 HIROSAKI DESIGN WEEKは約30年の歴史を誇るTOKYO DESIGN WEEKと連携したアートプロジェクトで、「弘前の郷土愛」をクリエイティブの力で育もうという試みです。その中で、2月13日~14にかけて行われたアートエキシビション「スノーアートギャラリー」に関連したプログラムとして、僕は一応のマーケティング専門家として、地元の若いアーティストのみなさんへ向けた「セルフプロモーション」講座を約90分、行う機会を頂きました。

 レポートということで、僕なりに感じたことを、こっそりと録しておく次第です。


スケールではない強さ


 吉野町緑地公園で開催された「スノーアートギャラリー」は、青森や弘前にゆかりのある若手アーティストが参加して、雪とりんご箱をキャンバスに作品を描くアートエキシビション。二日間、小さな子どもを連れた親子連れからお年寄り、参加アーティストの仲間が次々と訪れては皆で会話する姿に、東京にはない「小さな強さ」をひしひしと感じました。
 きっと、小さいということは、これからは強みになりうる時代です。日本の人口も減り、きっとそれぞれが思い思いのやりたいことを、やりたい人たちだけで発信していく時代です。そのためのツールも整っています。そこに大きいとか、多いとか、そういうことはあまり関係がありません。
 いかに「タイニー:弱小」であることを前向きに捉えられるかが問われます。あるいは、タイニーであることに誠実であり続けられるか。ひねくれないことが大切です。それは、お金や権力もそうですが、地方であるということも含めてです。東京やロンドン、NYを、決して羨ましがらないで下さい。今回出来上がった作品の一部は、弘前市役所で展示されることになるとうかがいました。弘前のように、市がここまで若いアーティストに歩み寄ってくれるというのは、東京ではそうそうあり得ません。


お金のかわりに、時間をかけよう


 タイニーであることは、コミュニケーションにとってはどうなのでしょうか。今回の講座のご依頼は、Instagramなどを用いた文字通りのセルフプロモーションのワークショップだったのですが、じつは少し拡張して、前半にはコミュニケーションの概論もお話させて頂きました。

 そこで僕はこんなスライドを挟みました。
「コミュニケーションには本来、お金がかからない」。

 これまでのコミュニケーションでは、情報を「多くの人に」「できるだけ時間をかけずに」届けようとすればするほど、お金が必要でした。みなさんが見かけるTVCMを流すために、大企業は毎月何億円も投資しています。日本の広告費の半分以上は、未だにマスメディアの媒体費に費やされています1。そんなお話も少しさせて頂きました。

 ですが本来、マーケティングやコミュニケーションの目的は「愛」を育むことです。誠実なやり取りの積み重ねによって、徹底的に「好きに」なってもらうことです。この「ラヴァー:LOVERS」を生み、「時間をかけて」そのコミュニティを育むことに対して、多くのマーケッターはいささか怠慢であったと思いますし、それを怠ると、お金をかけて最大多数への情報戦を仕掛けざるを得ないのです。コミュニケーションへの投資を悪く言っているのではありません。もちろん、必要な場合もあります。

 ですが、みなさんの武器は、お金がかけられないことです。

 みなさんは、コミュニケーションの本来的な関係に最も近いところにいます。お金でも権力でもないコミュニケーションしか取れないということは、僕は最高にピュアな状態だと思います。

 ですから、決して焦らないで、あなたの作品、あなた自身のキャラクター、あなたのプロジェクトを好きでいてくれる友人、友人の友人、友人の友人の友人...を、少しずつ育んでいってください。ただの「お付き合い」ではいけません。本当に買いたいと思える作品や商品、参加したいと思うイベントやプロジェクトを、時間をかけて、じっくり育てて行きましょう。誠実であることが大切です。Instagramも、Facebookもあります。これらはあなたの時間以外、かかるコストはありません。それが、レクチャーの前半に込めた想いです。

 そしてみなさんや僕の第二の武器は、急がなくても良いことです。

 ときどき疲れてしまったら、自由に休憩を取りましょう。僕も無理はしないようにしています。そしてまた元気が出たら、少しずつまたコミュニケーションしていけば良いのです。

 補足ですが、独立したアーティストとして企業と対等にやりとりしたいならば、自分の名刺やWEBサイト、プロフィールやポートフォリオの資料はしっかりと作っておきましょう。そのために数万円はかかるかもしれませんが、そのくらいのことをきちんと「一貫性をもって」継続的に出来ているアーティストは、案外少ないものです。

 パンクなやり方としては、自分のキャラクターとして、そんなにグイグイと発信しない、というやり方もありです。サボっているBLOGだけど、何かキャラクターが見えてくる、大してやる気はなさそうだけど、毎回気になる写真がアップされる、そんなやり方も、自分の魅せ方のひとつでしょう。

 いずれにせよタイニーであることは、コミュニケーションにおいては、かえって誠実さを生み出してくれるミツであると言えます。


隣の芝生はカンケーない


 アーティストのみなさんにとって、売れている他のアーティストやブランドはとっても気になるかもしれません。ファッションブランドをお持ちの方は、毎回注目を集めるブランドやショップのことも気になるかもしれません。アーティストの方は、スターのやり方が気になるかもしれません。

 ですが、気にしないでおきましょう。好きな人に振り向いてもらうために、その人が好きなセレブリティのマネをしてもダメなのと同じです。あなたはあなたですし、僕も僕です。彼は彼、彼女は彼女、SupremeはSupreme、村上隆は村上隆です。感染してはいけません。

 昨年、素敵な仲間と一緒に主宰するNPOプロジェクト「RAW SKOOL」のトークイベントで、ゲストの方がこんな事をおっしゃいました。「隣の芝を青く見ていてもしょうがない2」。ほんとうにその通りだと思います。羨ましがらないこと、妬まないこと。そういう強い勇気を、自分の中に育むことが大切です。偉そうに書いていますが、かくいう僕も、その鍛錬の真っ最中です。みなさんと同じですし、みなさんから学ぶことも多くあります。

 もう一つ、言葉をご紹介します。「人にはそれぞれ『天命』というものがあると思っています。人は生まれてきたからには何かをなすために生まれてきているんだ、と。3」。つまり、人には自分の「持ち場」があって、その「持ち場」に近いところで本気で続けていれば自然と上手くいくのだ、という考え方で、少しスピリチュアルですが、僕はこれも本当だと思います。自分が得意なこと、好きなこと、努力してきたこと、足りないこと、それらをひとつにして、自分はココでやりたいんだ、という持ち場を、是非探してください。持ち場が世の中になければ、勝手に作ってしまっても良いですよネ。

 20年前ならまだしも、これだけ色々なツールが揃った時代、タイニーなことは、よりオイシイはずです。僕もいったん東京へ戻って、タイニーなマーケッターとして戦います。みなさんときっとまたお会い出来るのを、楽しみにしています。




プロフィール

阿部将顕(あべまさあき)
フリーランスのメディアマーケッター。
1983年生まれ。2008年−2011年博報堂。退社後、カナダへ移住。帰国後は建築学とストリートカルチャーをバックグラウンドに、ドリンクやスポーツ、ファッションやライフスタイル分野を中心に、様々な企業・ブランドのコミュニケーション企画を行う。




1 『2014年 日本の広告費』、電通、2014年
2 『ストリート×行政の異色対談!宇野"YORK"陽介(プロBMXライダー/ARESBIKES)×森司(アーツカウンシル東京)|TWDW2015×ARTIPENDENT Vol.2 二日目「ストリートカルチャーとまちづくりの可能性」レポート』
3 『かけがえのない、あなただけの「天命」をみつけよう。| 椿進氏(パンアジアパートナーズ代表)| RAW SKOOL ROLEMODELS 005』